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P.231の補足記事(2)

(※この記事は『公務員試験 スピード解説 文章理解』の読者ページからのリンク記事)

TH 's Tongue In Certain Method Part 2 : 第1章 テーマ5 裏技について

狙われた選択肢

 裏技。何と魅惑的な響きをもつ言葉であろう。教わる者は、したたかに解答する自分に酔い、教える者は、それを口にする快感に酔う。この人を酔わせる裏技とは、本文を見ずに選択肢だけで解答を出す技術である。それでは過去問で早速やってみよう。下の問題は英文の内容一致問題だ。選択肢だけで解答を選んでくれ。どうぞ。


1 インドのヒンドゥー教徒の女性はだれもが、貧しい人々に一身を捧げて終わったマザー・テレサの死に涙した。
2 インドで異教徒の修道女マザー・テレサが受け入れられた背景には、この国の人々のヒンドゥー教の女神に対する崇拝があった。
3 マザー・テレサは、貧しい人々が現実に抱える問題は認識していたが、貧困の構造的な原因についてまでは関心がなかった。
4 インドの人々は、マザー・テレサをヒンドゥー教の女神の生まれ変わりとして崇拝していたが、これは彼女の誠実さのゆえである。
5 マザー・テレサは、貧しい人々には隣人としての援助が必要であると説き、その実践を通して世界的に女性の支持を得ていた。



 どうぞ、と言われても困ったであろう。ヤマ勘でしか選べないのではと思ったであろう。だが、根拠を挙げてこの問題の正解選択肢を決めることは可能である。

 この本の筆者は、大学受験予備校などで模試などを作成した経験を持つ。その立場から言えば、不正解の選択肢の作り方にはいくつかのパターンがある。その一つに、言葉を散らすというやり方がある。たとえば、下の選択肢群で3が正解だとする。

1 AがEをFする。
2 AがBをFする。
3 AがBをCする。
4 DがBをCする。
5 DがEをCする。

このように、正解の言葉であるA・B・Cを他の選択肢にも散らして配置し、正解ではない言葉と組み合わせていく。
 裏技は、そこを逆手にとって、各選択肢に共通する言葉から正解を出そうとする。先の問題でやってみよう。

 まず、『マザー・テレサ』は全肢にある。『インド』と『ヒンドゥー』は1・2・4にある。『貧しい人々』は1・3・5、『女神』と『崇拝』が2・4。2の『受け入れられた』と5の『支持を得ていた』は同じような意味なので共通と見なす。結果、『マザー・テレサ』を除いて、他の選択肢と共通している言葉を持っているのは、肢1が3つ、肢2が5つ、肢3が1つ、肢4が4つ、肢5が1つ。というわけで、共通点が最も多い2が正解。これは実際に本文を読んでから選んでも2が正解となる。

 このように根拠をもって正解の選択肢を示すことができた。いかがであろうか。

 さて、ここで様々なツッコミが考えられる。君はどうツッコミを入れただろうか。この裏技の汎用性を認めるか疑うかで、その内容は変わろう。認めるのなら、『では、今までの「作法」だの「論理形式」だのは一体なんだったのだ』というツッコミとなる。


常識という名の勇気

 裏技は、それを使いこなそうとする者に条件を突きつけてくる。一つは、複数の裏技を状況に応じ組み合わせて使えるようになること。もう一つは常識・良識をもつこと。前者は煩雑になるので専門書に譲るとして、後者について述べよう。次の過去問も英文の内容一致問題だ。この問題は常識・良識があれば答えが出ると言われて、君はその答えを出せるだろうか。


1 収入の高い家庭と低い家庭における生徒の成績には差があり、1年間の収入が200万円以上の家庭は、200万円未満の家庭よりほぼ20%成績が高い。
2 ニュースについて話し合ったり、博物館に行ったりすることは、家庭の収入水準に関わらず生徒の成績の向上につながる。
3 成績の良さと最も相関が高い要素として、ドリルを日常的に実践することが挙げられる。
4 生徒の学力差を考慮しない画一的な教育は、教育における民主主義の精神を失わせることになる。
5 親や学校は、学校教育の重要性をもっと認識すべきであり、入学試験を念頭に置いた教育に力を入れるべきである。



 説明の都合で肢5から見るが、この肢は入試を重視して教育しろと言っている。これは建前としては言ってはいけないことだ。だから、正解ではない。肢4は、『生徒』とあるから、普通で考えれば学校の先生が『学力差を考慮しない』のであろう。学校の先生は私立にもいるが、公立にもいる。公立の先生は公務員だ。公務員試験で同じ公務員を批判するような肢を正解にするわけがない。
 肢1も同じような感じで、公平を重んじる公務員を採用するための試験で、親の収入は子の成績と相関関係があると言っている肢を正解にするとは思えない。建前として言ってはいけないことだからだ。肢2は内容的には素直に頷ける文となっている。肢3もそうであろう。
 しかしながら、肢3のような選択肢が正解になるのは違和感がある。ドリルの話を公務員試験が正解として取り上げるだろうか。そう考えて肢2を見ると、こちらの方が公務員試験で問う良識としては内容的にふさわしい。決定的なのが肢1と肢2だけが収入の話をしており、しかも内容が正反対。正反対の内容を持つ2つの選択肢はそのどちらかが正解になりやすい。肢1が不正解なら、正解は肢2となる。実際にこれが正解である。

 さて、今の説明を受けて、君は何を思っただろうか。

 仮に、以上の説明に本心から納得したとしても、こう思ったのではないか。こんなこと、自分に出来るだろうか、練習ならともかく本番でこんなことをする勇気や良識をもちあわせているだろうか、と。


裏技を使う恐怖

 すなわち、裏技には恐怖を覚えないだろうか。君は思ったかもしれない。本文を読まずに答えを出すことは怖くないか。模試や遊びなら気軽にできるだろうけど、本番の試験で選択肢を読むだけでこの肢が正解だと、確信が本当にもてるのか、と。

 この問題もそうだが、肢1や肢5は内容がひどいと言えるにしても、肢4はよく見れば学校教育とも、日本の学校教育とも言っていない。肢5では学校教育と書いてあるのに肢4は単に教育と言っているということは、教育についての一般論を述べているのではないか。そう考えるとその内容に頷けなくもない。
 肢3も「常識」で考えればその内容は合っているのだから、これが公務員採用選考だからという理由で、これが本文に書いていないと本文を見ずに断言できるのか。そう断言するのは肢4と同様に怖い。
 今回はたまたま1と2が対比的な内容であったので肢2を選べなくもないが、他の問題もこんな風に上手くいくのだろうか。
 先ほどの『マザー・テレサ』の問題も共通語を見つけていって、最も共通語が多い肢が一つあったが、本番でこれをやってみて共通語の数が同じだったらどうなるのか。これもたまたま裏技で正解が出る問題ではないのか、と。

 それに対して、裏技は言うだろう。裏技には他にもテクニックがある。それらを組み合わせて使えば正解は出る。あとは練習あるのみ。
 本文を読むなど愚かなことだ。
 少なくとも選択肢は絶対に先に読むべきだ。
 どんなに出題者が頑張ったところで、それが公務員試験の択一試験である以上、不正解選択肢作成のパターンから逃れられず、それを逆手に取った裏技はいつでも通用するのだ、と。
 裏技はこれに補足して言う。裏技が通じない選択肢を作ることは可能だが、それをするとマトモに読解する人にとって非常に簡単な問題になってしまうので、それは出題されない。されたとしても例外的で少数なのだ、と。


裏技の皮肉

 気付いているだろうか。先ほど言葉を散らすという不正解選択肢作成法を、A・B・Cなどの記号を使って具体例を示したが、あの選択肢は裏技では解けない。共通する語の数がすべて同じになってしまう。他の選択肢が正解の設定でも成り立ってしまう。
 裏技を外す選択肢群を作るのは容易であることは事実である。また、逆に共通語があまりないもの、常識・良識などで答えを一つに絞れない選択肢群を作るのも容易である。たとえば、本文に述べられているそれぞれの事実関係で選択肢を作れば、選択肢群の内容はバラバラになる。次の国家Ⅱ種(国家一般職)過去問の選択肢群を参照せよ。


1 エグズマ諸島は、バハマのナッソーから南に160km離れたところに位置する。
2 エグズマ諸島は、何百もの島からできており、それらのほとんどに人が住んでいる。
3 エグズマ諸島の地形は、嵐やハリケーンなどが原因で毎年変化している。
4 バハマイグアナは、体が大きく、好奇心も旺盛なため、人間を怖がらずに近くに寄ってきた。
5 バハマイグアナはかつては食用にされていたが、おいしくないため、現在では食べる人はいない。



 これを一体どのような裏技を用いて答えを出すのだろう。エグズマ諸島やバハマイグアナについて、どんな良識や常識を当てはめうるのだろう。これは演習問題に載せてあるので、後で解答してほしい。

 しかしながら、裏技外しの選択肢群を作ると確かに、ただマトモに読解する人にとっては簡単な問題になりやすい。それもまた事実である。
 たとえば、筆者を含む問題作成者がよく用いる不正解選択肢の作り方として、「論理形式」の説明で紹介した「限定表現」「全称表現」をくっつけるという方法がある。
 たとえば、本文に『Aがある』と書いてあって、選択肢に『Aだけがある』と書く。当然、この二つの意味する所は論理上、全く違うので不正解だ。こんな風に安易に不正解が作れるので、高校受験や大学受験でもおなじみの選択肢だ。何も公務員試験特有の肢ではない。
 一方で、本文に『Aしかない』と書いてあったら、当然『Aだけがある』が正解だ。「限定表現」「全称表現」のある肢は不正解と思い込んでいる人は、この正解選択肢を簡単に不正解だと切り捨ててしまう。裏技外しだ。
 ところが、マトモに読む人、あるいは「作法」を使う人なら余計に、限定表現は本文で目立つのでスグにチェックして、選択肢でもスグに見つけてしまう。非常に簡単な問題となってしまうのである。

 このように裏技の第一の問題は、みんなが正解する簡単な問題で間違えてしまうということだ。

 しかも過去問をやりつづければ君もスグに気付くが、そういう簡単な問題は意外に少なくない。それこそ君が本格的な大学受験経験者なら、受験生のときの解法さえ思い出してくれば、それこそ「作法」なんて意識しなくても速く簡単に解ける問題は結構ある。

(ちなみに筆者は大学受験予備校で現代文の講義でも英語長文の講義でも「作法」を伝えていた。もちろん、ベースは本書の内容と同じだが、大学受験ヴァージョンの方がより複雑。)


使い勝手の悪さ

 次の選択肢は別の章で取り上げる文整序の過去問だ。隣り合う組み合わせが共通のものを数え上げて解いていく裏技で答えを出しくれ。


1 A-C-B-D-E
2 B-C-E-A-D
3 B-E-C-D-A
4 C-D-A-B-E
5 C-E-D-B-A



 これは勘のよい人だったら、肢2か肢3のどちらか、と思うかもしれない。そうであったとしても、共通の組み合わせを見ると、C-Eが肢2と5、B-Eが肢3と4、C-Dが肢3と4、D-Aが肢3と4だから、肢3が正解と判断するだろう。あるいは、肢4とも迷って決め切れないかもしれない。

 だが、これはAからEまでの5つの文の内、最初に来るのはA・B・Cの三択なのだから素直に文を読んで決めた方が良いのではないか。Aならそれで決まりだし、BかCなら次の文で決まる。素直に解いた方が速いし正解になるのではないだろうか。

 そして、実際の正解は肢2なのだが、肢2と3に絞れたら、後ろはC-EかE-Cなのだから、非常に判断がしやすい。これは英文の整序問題なのだが、もともとの問題はキーワードがハッキリした簡単な英文となっている(この問題も記号の種類を変えて演習問題に掲載済み)。こういう問題で裏技は間違えてしまう。

 ここから裏技の第二の問題点が見える。すなわち、裏技が効果を有する範囲は広くないということ。まず、文章理解科目以外ではほとんど使えない。文章理解でも空欄補充問題では使えないし(選択肢の内容がバラつきやすい、演習問題を参照)、文整序で裏技を使うのは今見てきたとおりで、普通に解いた方が堅実だ。長文問題のみに適用可能だが、それで良しとするかどうかだ。

 先にも述べたが、一つのことを学んで、そこだけで止まってしまうのは、能率的ではない。そういう即物的、一問一答的な学習法は応用する力を奪ってしまう。本書では少なくとも、論理的に書く・話す必要のある小論文や、さらに重要な面接・討論にも応用できるようにという信念をもって「作法」を伝えている

 いや、その即物的、一問一答的な方法論としても、裏技には疑念があるのではないだろうか。それはこの方法論に非常に曖昧な点があるところだ。たとえば、複数の裏技を組み合わせて使うにしても、その組み合わせ方が少なくとも、公務員志望者である若者には分かりづらい。先述のとおり、共通語を一番多く持つ選択肢が正解というのが裏技の基本なのだが、それを正解としない裏技もある。この2つを使い分ける判断の境界線が、文章理解の問題ばかり解いているわけではない普通の公務員志望者にできるのか、というほど不明瞭なのだ。
 煩雑になるので、どう不明瞭かはここでは検証しないが、先ほどの常識・良識で判断するという方法一つとっても分かるであろう。『公務員試験では正解とはならないと分かるための常識・良識』とは一体どこで決まるのか。それが明示されていない。
 また、裏技でも結局本文で確認する場合もある。それなら本文を先にチェックした方が確実ではないだろうか。


裏技はハイ・テクニック

 裏技は選択肢を見るのを中心としていることは確かだが、その肢を見るのも、先ほどの共通点を見出す作業以外に、選択肢の読解をする。たとえば、ある単語がその選択肢文の中にあるのは『すわりが悪い』とか『違和感がある』とか判断する。

 思うに裏技というのは、非常に高度な技ではないだろうか。文章理解を専門にやっている人ならいずれ本文を一切読まなくともほぼ完璧に正解を出せるのかもしれないが、普通の公務員志望者には習得するに高度すぎる技術ではなかろうか。
 選択肢を読む読解力、というか国語的センスもかなり必要だ。そんなに読解力や国語的センスがあるなら、それを普通のマトモな読解や「作法」に振り向けた方が余程健全ではないか。そもそも裏技は読解力のない人でも使えるもののはずではなかったのか。

 本書の「作法」という考え方に照らして見ると、ウソが書いてある不正解選択肢4つをいきなり読んでしまうという問題もある。
 また、相手の求めているものに反するという問題もある。出題者は情報処理能力が見たくて本文を選んでいるのに、選択肢だけで解かれるのは本意ではない。相手が望まないことをするという考え方は、いずれ面接などの人物試験でツケが回ってくる

 そして何より裏技は、採用されれば上司ともなる人々を嘲笑うやり方だ。それは公務員になろうとしているものの姿勢として正しいと言えるのか。
 もしかしたら、君が公務員を希望するのは何の志もなく、ただの安定志向か、あるいは家族や友達がいる町から離れたくないという「消極的な地元志向」からかもしれない。が、たとえそうであっとしても、市民・国民に奉仕する公務員になる以上、自己保身のために相手を嘲笑うような方法論で解答していいのか。
 いや、こう述べては見たが、そんな綺麗事はどうでもいい。たとえ、先輩公務員を嘲笑う人であっても、それはそれとして、次のことは理解すべきだ。

 すなわち、裏技を使えば時に間違える。しかし、「作法」は少なくとも間違えない。正解に至らないことが仮にあっても、間違った選択肢を選ぶことはない。

 少なくとも裏技は「作法」より使いこなすのが難しいのではないか。だから、最初に用いる基本の技にすべきでない。第1に使うべきは「作法」だ。バカ正直な読解・訳出が第2。裏技は技術として3番目くらいではないか。使うにしろ、それくらいがふさわしい。

 「作法」は情報処理という観点からは紛うことなき正攻法だ。そして確実に正解に至る方法としては最も速い。読解を前提としないから習得もしやすい。そう改めて述べた上で、最後にこの一節を記そう。

 「自分が持つ意見が正しくない」ことを恐れるな、「自分が正しくない意見を持つ」ことを恐れよ。

この一節をすべての裏技信奉者に捧げる。

(了)

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プロフィール

饗庭 悟 : AEBASATOL

Author:饗庭 悟 : AEBASATOL
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aebasatol@yahoo.co.jp

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